白い月~夜明け前のその空に~
「その髪、おかしくないか?」
「え、そう?なりたての美容師さんだったのかなー、まいっちゃうよね」
「にしたって、そんなぶつっと切るか?下手すぎんだろ。しかも、ゆづ伸ばしてるって言ってなかったか?今年の春から」
ドキッ…
優月はズバリ言い当てられ、鋭い陸に感心する。
同居しはじめた頃、陸は会話の中で長い髪っていいよなと、こぼしていたのを聞いた。
単純なことに、優月はそれを期に伸ばすことを決めたのだ。
まだその頃は、陸を好きだなんて自覚すらしてなかったけれど。
覚えていてくれたことを嬉しく思ったが、もう取り返しのつかない現実に、どんどん虚しく悲しくなった。
「あーあ…、仕方ねーなもう」
いつものように髪に触れようをしてくる陸の手を、優月はパンッと払いのけた。
しかも結構当たり強く。