白い月~夜明け前のその空に~
「触んないでよ、ウザイ…」
「…ああーそうだよな、彼氏いるもんな。わりぃな」
これ以上陸といると顔に出てしまいそうで、わざと冷たくし、さっさと自室に戻った。
(違う…違う。ごめん陸)
そう心の中で悲痛な叫びを優月は繰り返した。
いつものくせで触ろうとした手を、思いっきり拒まれた陸は、叩かれた痛みがやけに響いていた。
その痛みは、叩かれたものよりも、きっと拒まれたことの方が大きかった。
(そういえば、振り払われたの2回目だ。…そんなに、嫌だったのか)
ニセカップルを演じることで得た代償は、とんでもない爪痕を残すものだった。