白い月~夜明け前のその空に~

「触んないでよ、ウザイ…」


「…ああーそうだよな、彼氏いるもんな。わりぃな」



これ以上陸といると顔に出てしまいそうで、わざと冷たくし、さっさと自室に戻った。



(違う…違う。ごめん陸)


そう心の中で悲痛な叫びを優月は繰り返した。





いつものくせで触ろうとした手を、思いっきり拒まれた陸は、叩かれた痛みがやけに響いていた。


その痛みは、叩かれたものよりも、きっと拒まれたことの方が大きかった。



(そういえば、振り払われたの2回目だ。…そんなに、嫌だったのか)










ニセカップルを演じることで得た代償は、とんでもない爪痕を残すものだった。
















< 169 / 465 >

この作品をシェア

pagetop