白い月~夜明け前のその空に~
「あれ?ああ、何も考えてないよ。そのときに考える」
「うわー、適当!たまげるわ。ところで、光は髪黒くしないの?」
「優月がしてって言えばする」
「はあ~?本当に適当だよねー」
ニヤッといたずらっ子な彼の顔が鏡に映る。
優月の泡立った髪で、角を作る。
「おい…、人の髪の毛で遊ぶなよ」
「あははははは」
今度は角が2本に。
「もーっ!バカか!…っはははは」
優月が本当におかしいと思って笑ったのは、すごく久しぶりだった。
陸に何もバレることもなく、黒の髪に戻った優月は、少しだけ虚しくもどかしかった。
心配かけたくない気持ちと、心配してほしいという気持ち、両方持ち合わせていたから。
でも、そんな悩みを抱える優月を知らなくて当然の陸は、ちっとも嬉しくないことを彼女にしてしまう。
もっと傷つけることだと知らずに…。