白い月~夜明け前のその空に~
僅かに口付けされた手を片方の手でそっと押さえる。
(ほんっとにわかんないなーあいつ。調子狂う)
夕飯の買出しに近所のスーパーに寄った帰り、後ろから幼な声が聞こえた。
一生懸命彼女の名前を呼ぶ。
「ゆぢゅーーーーーーーう」
振る返ると、朝元気良く送り出してくれた瞬が、陸とおばあちゃんに手を引かれて歩いている。
「しゅーーーん」
優月はすかさず、三人の元へ駆け出す。
いつも保育園の迎えはおじいちゃんおばあちゃんがしているが、こうして優月や陸が一緒に帰ることもある。
彼らの家族構成は少々難しいとこもあるが、傍からすれば普通の家族に見えるだろう。