白い月~夜明け前のその空に~
誰もいない部屋で食べるプリン。
確かに自分の好きなものなのに、ただ甘いことしか舌に伝わってこない。
ふにゃっと柔らかく喉をすべりこんでいく、ポコタのプリンを無機質に感じたのは、恐らく初めてのことだった。
―――。.*゜――。.*゜―――
指の傷跡が綺麗に消えてきた頃、2年女子達の嫌がらせもなくなり、ついに写真の噂も途絶えた。
代わりに優月と長澤が付き合っている、という“嘘”は浸透していた。
噂が消えたのだから、嘘を続ける必要はない。
ニセカップルを解消してもいいはずなのに、切り出せずにいるのは、長澤の本当の気持ちと優月の迷いがあったからだ。
里乃と後藤、優月と長澤の四人で行動を共にすることも、最近では当たり前になっていた。
「今日帰りさ、カラオケ行かない?」
昼休み、里乃が購買のパンにかじりつきながら言う。