白い月~夜明け前のその空に~


誰もいない部屋で食べるプリン。


確かに自分の好きなものなのに、ただ甘いことしか舌に伝わってこない。


ふにゃっと柔らかく喉をすべりこんでいく、ポコタのプリンを無機質に感じたのは、恐らく初めてのことだった。







―――。.*゜――。.*゜―――


指の傷跡が綺麗に消えてきた頃、2年女子達の嫌がらせもなくなり、ついに写真の噂も途絶えた。


代わりに優月と長澤が付き合っている、という“嘘”は浸透していた。




噂が消えたのだから、嘘を続ける必要はない。

ニセカップルを解消してもいいはずなのに、切り出せずにいるのは、長澤の本当の気持ちと優月の迷いがあったからだ。






里乃と後藤、優月と長澤の四人で行動を共にすることも、最近では当たり前になっていた。


「今日帰りさ、カラオケ行かない?」


昼休み、里乃が購買のパンにかじりつきながら言う。
< 181 / 465 >

この作品をシェア

pagetop