白い月~夜明け前のその空に~
「家の事情か?」
確信的なことをずばり言われ、優月は一度目を見開く。
結構的を得ることをスパッと言ってくる長澤。
それでも深く追求しないことを知っている優月は、戸惑いつつ淡々と答える。
「まあ、そういう感じ?ばーちゃんに頼まれてた物があったからね」
「ふーん、そっか偉いな。なぁ、今度さ…、時間あったらでいいんだけど、どっか遊びに行かない?……二人で」
いつも調子こいたことを言っては、ニカッと歯を見せて無邪気に笑うのが彼のトレードマークでもあったが、今日は少し変だった。
それは、今日の彼は笑顔ではなく、いつになく緊張した顔だったから。
初めて下の名前を呼んだときと、少し違う。
緊張が冷たい風を通して伝わってくる。
「…うん。いいよ」
ほんの数秒のぎこちない間の後に、優月はそう答えていた。