白い月~夜明け前のその空に~

「やった…、優月どこ行きたいか、考えといてね!じゃあ、気をつけて帰れよー」


別れるとき、いつもの屈託ない子犬の姿に戻った彼に、心底ホッとしていた。

また保健室の時のような空気になることが、とても心配だったから。


テンションが上がったせいか、人目もはばからずスキップまじりで去っていく彼の姿は、子犬と言っても随分大型犬の子犬のようだ。




思い返せば、今日はいつもと比べて大人しかったのは、きっとそのことを言いたかったからかもしれない。


優月は妙に納得した気持ちになった。










二人が出かけた場所は、かなり無難な、乗り換えなしの電車で数十分のところにある、都内の大型ショッピングモール。

映画館は今の二人には少しハードルが高く、遊園地なら里乃達と行きたいことを考え、優月は悩むことなくすぐ思いついた場所だった。

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