白い月~夜明け前のその空に~
部活から戻ると、長澤は机に突っ伏して寝ていた。
やんちゃっぽい彼も、寝顔はすっかりあどけなくて可愛かった。
「…光?」
長澤を優月は揺すって起こす。
「遅くなってごめんね」
「ううん」
「じゃあ…、帰ろっか。この間肉まん奢ってくれたから、今日は私が…ん?」
「……」
優月の腕を引っ張り、上目遣いで訴える長澤。
「何?」
「…もう少し、残ってかない?」
彼の少し甘えたような仕草に戸惑いつつ、今の優月は家にいたくない気持ちのほうが強く、むしろその誘いは有難かった。
「…で、いとこのお兄さんとは、仲直りした?」
長澤のバイト先のピザ屋の話題の後、彼は突然あの話題に切り替えた。
極力触れて欲しくない事である優月は、適当にかわそうと努める。
「あー…、まだ微妙な感じかな。頑固だしね」
微妙なんて言って、実際の所は虫の件で余計に溝が深まってしまっている。