白い月~夜明け前のその空に~
彼もまた、なかなか素直に認めない彼女に気持ちばかりが焦っていた。
「一瞬ね、一瞬だけね」
しぶしぶそう吐いた優月だが、納得いかない長澤。
嬉しいと素直に認めたってどうせ同じだ。
陸にどうしたって妬いてしまうのに。
図書室を出る寸前、優月の後ろから長澤はドアの前に手をつき、彼女がドアを開けるのを遮る。
変に思い、優月は後ろを振り返る。
「光?」
「別に隠すことねーじゃん。…好きだったんだろ?」
追い詰められる状況になることを想定していなかった優月は、長澤の鋭い真剣な眼差しから、胸の奥に閉じ込めた想いに気付かれる危機感を覚える。
「い、いとことしてだよ?」
「なら…、俺のことはどう思ってる?」
即答できるほど余裕のない優月は、息すらまともに吐けない。
長澤はもう片方の手もドアにつき、優月に顔を近づける。