白い月~夜明け前のその空に~
「何をそんなに隠してんだ?…言ったよな?意地でもお前の隠してるもん脱がすって…。なんなら、前言ってた優月が言う本当のキスも、教えてよ?」
腰をかがめ彼女の背丈に寄せる。
彼の息が顔にかかるほど近づき、クセのないまっすぐな髪がさらりと優月の額に落ちる。
彼の黒目がちの嘘のない濡れた瞳は、彼女を捉えて離しはしない。
外にまで漏れそうな勢いで響く優月の心臓と共に、どんどん体の高揚度も増す。
あの時は顔を見られずに済んだが、今日はそういう訳にいかない。
うるさい心臓。
熱い顔。体。
でも、違う、このドキドキは…、この熱は…、
長澤の長いまつ毛が優月の目の前、僅か数センチの距離でゆっくり下ろされる。
「っ…やめて!」
その言葉と同時に、優月は長澤の体を両手で勢いよく押し返していた。
後ろによろめいた彼は、魂が抜けたようにぼうっとしていた。