白い月~夜明け前のその空に~
「…はぁ、はぁ、」
とっさの判断でとった行動は、思いのほか強かったみたいだ。
普段使わない力とこんな状況下で、優月の息は乱れる。
「ははは、結構力あるんだな。…ごめん。いとこに嫉妬した。ふつーに羨ましくて妬いた。かっこ悪りぃな。…この前待つって言ったけど、案外余裕ねーのかも。…でも、優月の返事、ちゃんと聞きくまで待ってるよ」
床に落としたカバンを拾い上げ、長澤は一人ドアに向かう。
「…今日は、ごめんな。先帰るわ、じゃあな」
一度振り返って見せた彼の小さな笑みは、とても寂しそうで優月が隠している胸の奥にまで伝わった。
こんな時にまで彼は優しい。
笑顔を決して忘れない。
ずっとその優しさに優月は甘えてきた。
その裏ではきっと彼を沢山傷つけていると知りながら…。