白い月~夜明け前のその空に~
でももう、あんな笑顔を彼にさせてはならない。
彼の無邪気な笑顔を消してはならない。
その決心が浮かんだ時、一人残った図書室の窓から斜陽が差し込むのを見ながら、あの帰り道のことを思い出していた。
―――。.*゜――。.*゜―――
「ちょっと待って」
優月の手を掴む長澤。
「え?どうしたの?…ええ、光?」
冷たい風と長澤の肩越しから覗く満月の月明かりに、優月は思わず目を瞑る。
彼女の口元に何かが触れる感触。
それは長澤の指だった。
「青海苔ついてた」
「え!うわ、はっず…」
にたりと悪戯な笑みを浮かべる彼。
優月は海苔が付いていたなんて全然気づかず、羞恥心にかられ手で顔を覆う。
しかも、彼の指が触れた感触に少しでもドキッとしたことに悔しくなる。
「今日すげー楽しかった。いっぱい笑ったし。優月のツンデレも見れたし」
「デレてはないよ」