白い月~夜明け前のその空に~


『秋の一つ星とも呼ばれている…』


(フォーマルハウト。みなみのうお座の一等星…。)



解説員のおじさんと重ねるように、優月は心の中で呟く。



秋の一つ星、かつて実際に父と探した星でもある。



目立つ星が周りにないため、ぽつんと1つだけ光るフォーマルハウト。

秋の星空は暗い星ばかりで寂しいとよく解説で言われていた。


その頃は一人で星を見ることもなかったため、ちっともその寂しさが分からなかったけど、今は何だか似たもの同士とさえ思ってしまうほど共感してしまう。



「…っゴホ、ゴホン」


静かな空間でふいに咳きが出て、優月は遠慮がちに抑える。


(…そう言えばお父さん、言ってたなぁ。亡くなったらお星様になるんだよって。星になっていつも空から大事な人達を見守っているんだって。だから、私も星になったらお父さんお母さんのこと見守るんだって言ったら、子供が親より先に亡くなるなんてそんな悲しいことないだろ、なんてびっくりするくらい怒ったっけ。





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