白い月~夜明け前のその空に~
長澤はすっと伏目がちになると、口をつぐんだ。
「少し前…、学校で噂になったんです。陸さんと佐野の…」
そして重たいその口を開いた時、陸は頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を受ける。
優月の嘘の真実を知った時、彼の中で形成されていた、行き場のない気持ちもろごとガラガラと崩れ落ち、破片が散らばった。
『陸さんと佐野が一緒にいる写真がネットで出回って、その写真には子供も写っていて。
その子は二人の子供なんじゃないかって…、隠し子じゃないかって。
あまりにも冗談とも言いきれない噂に、学校側でも厳しく注視されてたんです。
しかも、そう簡単に噂は消えなくて、それでもみ消すために思いついたのが、俺と佐野が付き合うふりをすることだったんです。
佐野が考えたんじゃないです。俺が勝手に提案したんです。
今はもう…、その噂は消えましたけど』