白い月~夜明け前のその空に~


陸の耳には長澤の声がどこか遠く、無機質のように聞こえた。


まるで他人事のように、テレビから聞こえてくるように。





そしてニセカップルを演じたことで、優月が先輩から陰湿ないじめに遭っていたことも知る。


確かにバッサリ髪を切って帰ってきたあの日、様子がどこかおかしかった。

今思えば、彼女のあの言い訳も無理がある。






何でもっと早くに気づいてやれなかったんだろうと、長澤から話を聞いていくうち、陸はしだいに自分に腹が立ち始めた。


「佐野…、ずっと一人で抱え込んでばかりいるんですよね。何考えてるんだろうって、たまに思うんです。落ち込んでるような、悩んでるような…。そんな顔してても、すぐにパッて消しちゃうんです。力になりたくても、結局何も出来なくて」


本来ならば、もっとも近い存在で昔から彼女を知っているはずの陸が、力になるべきなのに、むしろ彼は遠ざけていたのだ。


しかも、大事になってしまった噂の原因は紛れもなく自分だ。




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