白い月~夜明け前のその空に~
言葉を失くす陸の隣で、静かな声で長澤は続ける。
「一人でそうやって抱え込むのも、陸さんに隠すのも、それって陸さんが佐野にとって特別な存在だからなんだと思うんです。…迷惑かけないようにって、傷つけないようにって。きっと家族以上に大事なんだと思います」
(家族以上……?)
長澤の意味深な言葉に、無機質だった声が鮮明になって聞こえ始める。
「俺…、佐野のこと好きです」
その時、ついに周りの雑音が消され、長澤の芯のある声だけが陸の耳に響いた。
「陸さんには正直敵わないなって気がしてるんですけど、ふりじゃなくて本当の彼氏になりたいって思ってます。真面目に」
真っ直ぐ見据える長澤に、陸も逸らすことなく答える。
「それは、宣戦布告ってやつかな?」
「当たり前じゃないですか」
そう断言すると、長澤は不敵な笑みを浮かべた。