白い月~夜明け前のその空に~
「…ふっ、君には色々驚くよ。いい度胸してる」
すぐに頭を下げたわりには、強気な姿勢は相変わらずな長澤に陸は感心した。
その長澤は自分で言っておきながら、随分照れくさそうに髪をいじっていたりしたが。
「俺も、知っているようで知らないことが多いのかもな、ゆづのこと。もっと話さないとな。…ゆづのこと気にかけてくれて、ありがとう。今までのこと、正直に話してくれてありがとう」
陸は深々と頭を下げた。
「いえいえ、俺の方こそ、生意気言って、嘘ついてごめんなさい」
「もうそれはいいって。にしても、長澤君は本当に正直者なんだな」
挑発したかと思いきや、また弱気に。
彼の持つ全力の屈託のなさには陸は嫌味を全く感じなかった。
むしろ好感触だった。