白い月~夜明け前のその空に~
同じ車両に乗っていた乗客数人が停車駅で降りると、その後乗ってくる客はおらず、二人がいる車両は貸切状態になった。
ガタガタと電車の音と揺れが際立つ中、他に乗客がいない車両に、隣同士で座るには余裕があり過ぎて、気楽な分どこか不自然でもあった。
窓から太陽で反射する海の水面が見え始めた時、優月は陸に声を掛けた。
「ねぇ、陸?……起きてる?」
肘で軽く陸をつつく。
「……ん?…どうした?まだ着かないだろ?」
薄目を開け、くぐもる声で言う。
「ごめんね、夜に遠くまで来てくれたんだから、眠くて当然だよね…。あと、ずっと嘘ついてて、ごめん」
「うん?」
まだ睡魔から覚め切っていない陸は、彼女の沈んだような顔に目を凝らす。