白い月~夜明け前のその空に~
「でもな、ゆづが一人で背負うことなんかねーんだよ。俺達は家族に変わりないって言ったろ?」
陸はそう言うと、くしゃっと優月の頭を撫でた。
「私も家族だと思ってる…。でもそれだけじゃないんだよ。守ろうとしたことだって、本当は…」
陸に向ける彼女のその眼差しは、涙を滲ませながらも、強い決心を宿らせていた。
陸はその熱のこもった目にドキッとし、優月の頭から手をどける。
「陸、私、陸に話したいことがある…」
「それだったら、家に帰ってからゆっくり聞くよ」
「ううん…。今、話しておきたいの。多分、一度しかもう言えないと思うから」
次の乗客が乗り込む前の、その僅かな時間。
車両にできた二人しかいない小さな世界を乗せながら、電車はガタガタ音を鳴らし、規則正しくただ走っていた。