白い月~夜明け前のその空に~
「……んん?」
「ゆづ、起きてるか?」
「なあに?」
お盆に手にした陸がドアをそおっと開けた。
すると優月は真っ先にお出汁の匂いにすぐに気づく。
お腹もきゅるっと反応。
「部屋の明かりが見えたからさ、夜食作ってきた」
ミニテーブルに、陸はほかほかと湯気が立ち上る、小さなどんぶりを置く。
小ぶりでも油揚げも落とし卵もほうれん草や長ねぎも入って、鰹節の出汁も効いた、立派なきつねうどん。
「うとうとしてたけど、これ食べたらもうちょっと頑張れそう」
「あんま無理すんなよ。ちゃんと寝ないと、また風邪くぞ」
うどんをにこにこ頬張る優月を見ながら、陸は呆れつつそう言った。
「はいしょーふ、はいしょーふぅ」
はふはふしながら今度は幸せそうに目を細め、じっくりうどんを味わう優月を、陸は小さく声を漏らし笑った。