白い月~夜明け前のその空に~
至近距離で絡み合う二人の視線。
それを期に、あの言葉を交わさなくても満たされてしまう、優しく淡い空気が流れ出す。
優しいけれど、鼓動の音も脈も激しく速くなり、二人の体の熱が上昇していく。
視線を逸らせば、きっとこの空気も変わる。
でも瞬きはしても、二人とも視線は逸らすに逸らせずにいた。
向こうから逸らしてくれればいい、そうお互いが思っていたから。
でもその思いは報われず、まるでここだけ時間は止まったように…。
優月の目が熱を帯びたように、少しずづ潤んでいくのが陸はわかった。
次の瞬間、彼女の髪にゆっくり手を伸ばしていた。
耳元の髪にやんわり触れ、そっととかすように撫でる。
洗いたてのシャンプーの香りは、新しくしたのか、いつもと違う香りがした。
どこか控えめででも愛らしい香り。