白い月~夜明け前のその空に~
その傍ら、優月は一人焦りが生まれていた。
今まで陸の進路を全く気にしていなかったわけじゃない。
けれど、気にしないようにしていたのも事実だった。
二人にはまだ踏み込めない事があった。
気持ちは通じ合えていても。
過去の事、離れていた間の事すらまだ打ち明けていないのに、これからの事なんてもっとも話題にしづらい事。
ずっと知らないままでいる方がおかしい。
そんな事続けられるはずがない。
それだけは常に思っていた。
今の家の中の平穏が、過去の事を話さずにいることで保たれているのなら、それが一番いいと互いに思って過ごしてきたが、本当は心のどこかでは、間違っていると気づいていた。
里乃に聞かれたことで、優月は一段とその思いが強くなったのだった。