白い月~夜明け前のその空に~




(…かわいいなぁ。こっそり学校につけていっちゃったりして。…あ、こっちもいいかも)


隣のネックレスに手を伸ばし、同じように手に取ってじっくり眺める、迷う彼女はそんな事を数回繰り返すのだった。





好きな人と通じ合えるだけで、世界が一気に明るくなった気がして、綺麗なものはもっと綺麗に、かわいいものはもっとかわいく見えた。

けれど、優月が急にアクセサリーに興味が湧いた一番の訳は、彼の前でおしゃれしたい、かわいく思われたい、そんな気持ちが素直に表れるようになったからかもしれない。







しかし、現実的に見て、なかなか手の出し辛い値段に、ため息が落ちた。


スーパーに寄ったのもあって、今手持ち金は僅か500円程。



一番最初に手に取った鍵のネックレスをもう一度眺めると、静かにそっと棚に戻した。






名残り惜しそうに店を離れると、前方に見え覚えのある男子校生の姿が目に入った。





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