白い月~夜明け前のその空に~
大人っぽい雰囲気を制服が緩和する。
自分のよく知る手編みのネックウォーマー。
今優月が一番ドキドキする人。
向こうも彼女にすぐ気がついた。
「ゆづ!何だ、ゆづも買い物に来てたのか」
突然ばったり出くわし、あたふたしている間に陸が駆け寄る。
「うん、学校が早く終わったから瞬のお迎え行こうかなと思ってたらさ、ばーちゃんからお使い頼まれて。ちょっと他の店も寄ってたとこ。陸は?」
「俺は本買いにな。ここ見てたんだ?へぇ、どれか気に入ったのあったのか?」
さっきまで彼女が吟味していた棚に移動する。
「え?あ…、うん。でも、どうせ似合わないだろうし、いっかなって」
「そう言えば、ゆづが指輪とかネックレスつけてるの見たことないな。でも、全然似合わないってことないんじゃねえの?」
「似合わないよ。もういいんだって。それより、これ、瞬とばーちゃん達の好きな食べ物買ってきたから、早く帰ろう」
買い物袋をぐいっと突き出し、話を逸らす。