白い月~夜明け前のその空に~
「そうだな。帰るか。俺持つよ、貸して」
「ありがとう」
陸が袋を受け取り、中身を見ると、ポコタのプリンを発見し喜んだ。
とっさに強がり反対の事を言ってしまった彼女は、内心後悔をした。
けれど、プリンに喜ぶ陸の子供っぽい笑顔が、家の外で見れた事の方が何よりも嬉しく、それに放課後の制服デートのような気分に心が弾み、後悔などすぐに塗りつぶしてしまった。
二人きりで出かけることなんて、そうそうない。
多分きっとこの先も。
彼の卒業も近いことを考えれば、偶然ばったり会い、制服で一緒に帰る、そんな時間は奇跡に等しい。
ささやかな喜びを優月がかみ締めていると、先を歩き始めた陸は、「ん?」と不思議そうな顔をして振り返った。
バスに乗り込むと、空いていた一番後ろの席に座った。
隣り合う感覚が思いを伝え合ったあの日と重なるようで、甘いドキドキが二人に響き渡る。