白い月~夜明け前のその空に~
置いていた優月の手に微かに陸の手が触れる。
一瞬びくっと反応した優月は、窺うように隣りの陸を見る。
目が合うと言葉の代わりに、キリッとした澄んだ眼差しをゆっくり朗らかにさせた。
それはまるで優月の心を見透かすようで、くすぐるようで、先に見つめたのに悔しいほどに自分の方が照れてしまった。
せめてもの仕返しとして、彼女がとった行動…。
それは、彼の手を握ることだった。
ぎこちなく彼の手の上に重ねた手。
少し大きな指先が彼女の手をやんわり包む。
最後尾に漂う秘密の雰囲気に誰も気づかず、バスは走り続けた。
そして、誰も気づかないことが、優月のドキドキの熱に拍車をかけた。
重ねた手を浮かせ、すっと指を絡ませる。
大胆な事をしている自覚はある。
でも勢い余って、思った以上に強く絡ませてしまった事に慌て、手を離そうとまた浮かせる。