白い月~夜明け前のその空に~
すると、逃げるなとでも言うように、今度は陸の方から指を絡ませた。
優しく、しっかりと。
互いに別々に窓の外を眺め、言葉を交わさなくても、繋いだ手は降りるまで離さなかった。
彼らのドキドキの針は振り切れんばかりだ。
けれど、それはとても心地の良いリズムと熱で満ちていたのだった。
あの日からそう時間は経っていないが、確かに二人の密度と純度はどんどん増していた。
歩いて家に辿り着くまでの路地。
繋いでいた手の温もりがなくなり、外の寒さが余計に身に染みる。
熱もドキドキもようやく治まってきた頃、里乃に言われ、もやついていたあの事をついに切り出した。
「陸、陸って卒業したらどうするの?」
「就職する」
聞き返すまでもなく、彼のはっきりした言葉は冷えた空気に冴え渡った。