白い月~夜明け前のその空に~
その言葉の反動で優月は足を止めていた。
「こっからすぐ近くの菓子工場。実はさ、もう内定ももらってるんだ。バイト先でもよかったら社員にならないかって、言ってくれてたんだけど。新しい世界に一から入って頑張ってみようと思ってんだ。……て、ゆづ?」
何の反応もない彼女に気づき、後ろを振り返る。
「そうだったんだ。もう決まってたんだね。知らなかった」
「ああ。わりぃ。言い出すタイミングなくて。遅くなった」
「ううん。そっか、じゃあ、お祝いしないとね」
「いいよ、そういうの」
「はぁ~?するの!誕生日、クリスマス、あと、めでたいことは全部みんなで祝うんだって、そう言ったの陸でしょ。…彼氏ができたお祝いはいきすぎだったけど」
口ごもりながら付け足すあの日のこと。
「あ~、それはもう忘れてくれ」
口に手を当て大げさに恥ずかしがる陸に、からかうようにここぞとばかりに、いつもやられている髪ぐしゃぐしゃ攻撃を与える優月。