白い月~夜明け前のその空に~
「ええ~い」
「うわっ、こら!やめろ」
背伸びしていじる髪。
抵抗しながらも本気で怒らない陸。
反対の立場になった二人はどこかぎこちなく、そしてほんの少し照れくさくて頬が熱かった。
じゃれあう、そんな光景は家の中でもよくあることだ。
でもただ一つ違うことは、そこに互いの気持ちを表に出すか出さないか。
もちろん今は隠す必要がない。
けれど家までもうすぐの距離では、隠さざるえない。
そのもどかしさが二人の胸をさらに締め付けた。
そんな危ういこの状況下で、陸は一瞬切なげに目を伏せた彼女を捉え、近寄るなり耳元に口を寄せた。
「…よくもやったな、後で覚えてろよ。バカゆづ」
そう囁き、あっという間に甘い余韻を残した。