白い月~夜明け前のその空に~
このように二人が言い合う光景も相園家では珍しいことでもなかった。
じゃれあいの延長戦のようなもので。
けれど最近の優月にとっては、だいぶ後味悪いものとなった。
そんなこと今まで感じたことなかったのに。
テンパりぐせとかドジだとかで注意される分には、別に腹が立つこともなかったが、モテないだとか彼氏できないだとか、恋愛面での小言を言われるのはとても嫌な気分だった。
自分のことを差し置いて言う陸に、反逆して彼女から言い返すこともできるだろうに、それは絶対しなかった。
完璧な陸に歯向かう惨めさより、触れるに触れられない過去を、この際とばかりに引き出すほうが何倍も汚く恐ろしいものに感じた。
なにより、本当に単純に、陸に恋愛を心配されることが、一番辛くて切なかったのだった。