白い月~夜明け前のその空に~
染まる涙色…
高校生活最後のテストが終わった。
残すは登校日と卒業式だけ。
あとは自由登校となる。
ホームルームを終え、教室に数人残った人達が賑わう中、帰る支度をして一人教室を出ていく陸。
「相園ー!じゃあな」
「登校日にね~」
去る間際、クラスメイトが彼に声をかけた。
「おうっ」
珍しい、と思った。
普段口を交わすことはあっても、陸は一緒に誰かと行動を共にすることはなかったし、特定の友達も作ってこなかった。
だから、そんな風に親し気に声をかけられたのは初めてに等しい。
それ程、卒業を意識しているのかもしれない。
驚きはしたが、それでもほんの少し嬉しく思ったのだった。
陸は校門とは別の方向へと足を進める。
いつかもそんな事があったのを思い出す。
でもその時と大きく違うのは、胸をざらつかせるあの感覚が全くしないこと。