白い月~夜明け前のその空に~
誰にも声を掛けられず、しばらく独りでいた入学当時。
卒業を間近に控え、望んで独りになった今。
怖さは相変わらずだが、その中にはあの頃にはなかった、小さな勇気と光があった。
本当の自分を知っていてくれる人が一人でもいる。
いつしかそのことが彼女の一番の支えになっていた。
彼と同じように独りきりで過ごすようになり、改めて気づいたことがある。
まずは話を無理に合わせる必要がなく、気楽だということ。
それとやっぱり心細いこと。
寂しいこと。
自分だけ異空間にいるような、そんな錯覚を感じること……。
最後に気づいたそのことは、彼女をハッとさせた。
もしかしたら、自分には想像もつかない物を彼は背負っているのかもしれない、と。
静かに遠くを見つめていた彼の理由を何となく悟った。