白い月~夜明け前のその空に~
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比較的穏やかに会話が広がり、落ち着いた時間が流れる手芸部の風景。
ところが、一段と会話が盛り上がる賑やかな日があった。
一学期の終わりで部活を引退した3年生が久しぶりに来たのだ。
「みき先輩、こっちにありそうじゃないですか?」
「ふーう。どれどれ?」
腰に手を当て長い息を吐き、優月が差し示す段ボール箱を覗きに向かう。
彼女は3年の仁科未姫(にしな みき)。
元部長で手芸部に優月を勧誘したのも彼女だった。
優月が入部したのは、裁縫が好きだからというのが一番の理由だが、彼女のあけっぴろげで明るい性格に惹かれたのも理由にあった。
かつて部活で制作した作品を、部室に置き忘れていたことを思い出した仁科は、それを今日取りに来たらしい。
他の3年元部員達は後輩達と談笑していて、隣の準備室で仁科の探し物に優月が手伝っていた。