白い月~夜明け前のその空に~
打ち明けた当初こそ戸惑いもあったが、産むこと真剣に考えている彼女の思いに触れ、快く部員達は受け入れた。
最初から夏には退学することを決めていたようで、彼女の僅かな学校生活、部活生活を、充実できるよう、みんな一生懸命に制作し、みんな全力で楽しんだ。
体のこともあってか、なかなかクラスには溶け込めず、行き辛かったこともあり、桐谷はほぼ部活だけのために登校していた。
そして告げた通り、夏に学校を去っていった彼女だが、文化祭のために制作していた作品は、きちんと仕上げていた。
実は彼女は生まれつき、心臓に疾患を抱えていた。
当然出産にリスクがあることも理解していた。
それも全部覚悟の上だったのか、不安だったはずなのに、部活にいた彼女はいつも笑っていて、仁科も笑顔の印象が強く残っているそうだ。
出産予定は秋だった。
だが、夏を境に体が思わしくなくなり、早産になる可能性があると診断され、すぐに入院生活になった。