白い月~夜明け前のその空に~


入院中も部員達は度々お見舞いに訪れ、そこでも彼女はやはり手縫いで何かしら作っていたそうだ。



そして、危ぶまれた出産だが、無事に予定通り秋に出産することが叶った。



もちろん部員みんなで赤ちゃんと対面し、祝った。




これからも彼女とその子供をみんなで見守っていく予定だった。

部室にだって遊びに連れてきてくれるはずだった。



けれど出産して間もなく、桐谷は体調を崩してしまい、一度は回復したものの、入院生活からすぐに復帰することができず……。



そして12月。


彼女は亡くなった。






ここまで聞いた時、優月は呼吸することさえ苦しさを覚える程、胸が痛んだ。

いつの間にか手をぎゅうっと固く握っていたらしく、爪の後が手のひらに食い込んでいた。


「……ほとんどみなみに手伝ってもらった物ばかりだけど、やっぱ一番最初に作ったこのポーチは、宝物かな」


そう言いながら、キャラメルポーチを、仁科は両手で包むように持つのだった。







< 394 / 465 >

この作品をシェア

pagetop