白い月~夜明け前のその空に~
「私も、もう一回見ていいですか、そのポーチ」
「うん、いいよー。愛でて愛でて」
優月は仁科が一生懸命探していた理由が、よく分かった気がした。
話を聞いて改めて見るポーチは、桐谷が残していった繊細な優しさ、強さを感じるようだった。
既成品と言われても分からない程に、細部まで綺麗に縫われている。
マカロン柄の生地の配置も、きちんと考慮しているのだろう、ジッパーを境に、柄が左右均等に来るようになっている。
キャラメル型もあってか、可愛らしくて、大きさも化粧品を入れるのに丁度よく、実用性抜群。
悔しいほどに、完璧だ。
実際彼女が縫っている姿を、できるなら、一度自分の作品を見てもらいたかったと、優月はそんな思いがこみ上げるのだった。
「あっ!そうだ、みなみと撮ったプリ持ってたんだよ。見る?ちょっと待ってて」
「ええっと…」
優月の返事も待たず、にこにこと教室へ戻っていく仁科。