白い月~夜明け前のその空に~
「そうだね、分かんないよね……」
優月がストローを回すと、カランとコップの中の氷が揺れた。
何気なく零した先ほどの男性の一言が引っ掛かっていた。
『…やっぱママがいいかぁ』
観念したような、諦めたような、でも少し寂しいような、そんな風に聞こえた。
母親には敵わない。
それは立場が逆でもそうだろう。
お互いに宿命なものなのかもしれない。
それでも、我が子に拒まれるのは、いつだって寂しいことのはず。
優月はその気持ちに寄り添える気がした。
あの父親の気持ちが分かる気がした。
瞬に拒まれたことはまだない。
でも、一緒に暮らしていく中で、もし拒まれたら……、本当の母の存在を求めたら……、
そう考えると不安で怖くてならなかった。
自分から瞬を拒んでいたはずだが、本当は瞬から拒まれることに一番不安を感じていたのだ。