白い月~夜明け前のその空に~



そして今日もそうやってやり過ごそうと決めていた。


数人残っていた教室も、次第にぱらぱらと帰っていき、ついに教室に優月一人残った。





やっと訪れた一人きりの時間に、まるで贅沢なご馳走でもありつくかのように、ぐだっと机の上で突っ伏した。

茜色の日差しと静けさが妙に心地いい。



まとわりつく寒ささえ嫌な気分にはならず、むしろ物語の挿絵程度にすら感じた。

特に時間は決まっておらず、いつも気が済むまで教室にいる。


と言っても、一人きりになって長くて30分程だが。





今日は里乃達と春休みの約束をした。


遊びに行く場所を話していたが、結局話が脱線して肝心な場所は決まらなかった。



(……どこ行こう。どうせなら、桜見える場所とか。でもまだ桜咲かないか)



桜のことを考えていると、ふいに桜の木の下で陸と再会した日の事を思い出し、胸の奥がぎゅうっと締め付けられるのだった。

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