白い月~夜明け前のその空に~
窓から僅かに差し込む夕日を眺めていると、廊下から近づく足音に気づく。
どうせ隣のクラスの人かもしれないだろうとさほど気に留めず、また眺め続ける優月。
ところが。
ガラッ
「おい、まだ残ってるのか、早く帰りなさい!」
「ひゃはいっ!」
突然の怒号に驚いた優月は、その拍子に上ずった声を出し、椅子から落ちそうになった。
しかしその声の主に気づくと、今度は肩の力が抜け、ついにバランスを崩して結局は椅子から落ちてしまった。
「いったたた……」
「何してんのー。教室に一人で。図書室に用あるって言ってたじゃん」
飄々とそう言いながら落ちた優月に手を差し伸べ、立ち上がらせるのを援助する長澤。
「……借りたい本がね、探したら借りられててね、じゃしょうがないやって、教室でふてくされてたとこ」
「へぇ~。わざわざ教室で?」
「そうだけど。誰もいない教室って、案外落ち着くんだよねー。静まり返った感じがさ」
とっさの言い訳だが、半分は本当の事なのだからと、少し自信ありげに言った。