白い月~夜明け前のその空に~


「でも……、せっかくの機会なのに。最近ライブ全然してないって言ってたじゃないですか」


「まあな。けどしてない時間も無駄にはしねぇよ。その分曲作って、スキルも上げて。いつだってライブはできっから。ぞのはさ、もっと子供との時間大切にしろって。一緒に居られる時間はめいっぱい使ったって損はない。親子なんだろ」



卓越した言葉を放つ彼はまだ20代半ば。


やんちゃそうに髪の襟足を赤色に染めているあたり、さすがバンドマンという風貌。

そんなギャップに男ながら陸は憧れてもいるのだった。


「はい。分かりました」


陸は素直に応じ、それを見た洋平は『よろしい』と腕組みをしながら深く頷くのだった。



「ありがとな、その気持ちはすげぇ嬉しいから。……で、どうよ。子供ちゃんは。あれからどんな様子?」


「機嫌はもうすっかり。でも、あの日からちょっと家の中の雰囲気が…あまり。瞬も気づいてると思う。小さいながらに」






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