白い月~夜明け前のその空に~
陸の温もりを感じながら、優月は幼い頃を思い浮かべ、少しづつ過去を振り返っていく……。
「……引っ越ししてから、陸と離ればなれになって、寂しくてすぐには友達できなかった。
でもね、しばらくしてすっごく頼りになる友達ができたんだ。
私が泣くといつも側で慰めてくれて、女の子なのに泣かした男の子相手にパンチするくらいでね。
クサいかもしれないけど、本当にヒーローみたいだった。
小学校に上がって、周りの環境にも慣れてきた頃……」
それは彼女の中でも、もっとも思い出したくない“時期”。
脈が速くなり、一度ぎゅうっと目を瞑る。
瞼の裏にうっすら広がる、三人で暮らしていた家。
誰も視線を合わせようとしない、会話のない、まるで静止画のように無機質で温度もない。
蘇る空気は今も体が覚えている。
でもそれはもう過去のこと。
二度と戻ることのない………。