白い月~夜明け前のその空に~
陸の事、思い出してたんだ。
会いたいって、思ってた。
小さい頃みたいに、助けてって……。
そしたら、本当に陸が来てくれた。
もう会えないんじゃないかって、忘れちゃってるんだろなって思ってたから、びっくりした」
小さく口元に笑みを浮かべると、陸は繋いだ手を離し、優月の頭に手を置くと髪を柔らかく撫でた。
「…ゆづの泣き声すぐに分かった」
「本当に、嬉しかったよ」
二人は再会した日、同じ記憶が再び紡がれ始めたあの春の日を、同時に思い浮かべた。
同じ気持ちで、互いに目を合わせる。
空白の時間はそれぞれ全く違う時間だったけれど、今こうして、隣り合って時を刻めることを何より愛おしく感じていた。
共に大切な人を失った過去。
通じ合ったのは、命の存在だけではない。
幼くして芽生え、心の鍵で閉じ込めた、秘密の恋。