白い月~夜明け前のその空に~
「……陸っ」
口から零れ出る彼の名前を呼ぶ声。
陸はその度、彼女を抱きしめキスをした。
言葉にならない思いを全身で受け止めるように。
いつしか、外気にひんやりした素肌さえも消え失せる程、二人重ねた素肌は、熱く温度を上げ、忘れえぬ気持ちが互いの体に刻みこまれていった。
優月が目を覚ますと、何も纏わぬ肌に触れる陸の腕にドキッとし、そっと身を起こす。
まだ体の火照りは残っている。
触れられた体の感覚に、頭がぼうっとする。
陸は穏やかに目を瞑り、静かな寝息をたて寝ていた。
服を着ると、カーテンを小さく開け窓の外を覗く。
まだ当分朝日は昇らない。
夜空と溶け合う深い青色が、やがて訪れる朝を予感させるようだった。
西に移動し下がりつつある下弦の月が、そんな冴えわたる空にひっそりと光を降らしていた。