白い月~夜明け前のその空に~


「今もやってるのかな?最近図書館行ってないから分からないや」


「今も恒例でやってるみたいだよ。この前掲示板に、図書館便り貼り出されてるの見かけたけど、来週かな、影絵の劇団来るって」


「本当に?そうなんだ…。まだやってるんだね。なんか嬉しいな、変わってなくて」


そう言う彼女の瞳はきらきら輝いた。

それは月明かりのせいだけではいないだろう。



「瞬も連れて、見に行ってみるか?」


「うんっ!そうだね。みんなで行こう」



陸にぱあっと笑顔を向ける。

それはあの日、窓辺で見た幼い彼女の笑顔と重なるようだった。



すっと彼女の頬に手を伸ばす。


にこにことほっこりする表情とは反対に、肌はひやっとした。


「ん?なに?」

不思議そうに首をかしげる。



「……冷える。もう布団に戻ろう」


優月は頷くと、ふと視線を月に戻した彼の横顔が目に入る。



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