白い月~夜明け前のその空に~
真っ直ぐじっと見つめる瞳。
暗闇の中象られ、月明かりにほのかに照らされる横顔。
それは優月があの日見た彼の横顔と重なった。
ずっと目に焼き付いて離れなかった、忘れることはなかった…。
まるで陸が月そのもので、世界中の悲しみも苦しみも全部背負っているんじゃないか、あの時は幼くそんな言葉すら知らなかったけど、きっとそんな姿だったに違いない。
優月は今やっとその思いに気づいた。
だけど、どんなに目を凝らしても本当の事は誰にも分からない。
それでも言葉で伝えられないなら、伝えたいなら、伝えて欲しいなら……。
下弦の月を眺めていると、陸は背中にふわっと温もりを感じた。
あの頃のような寂しい冷たさは、もうどこにもない。
側にあるのは、心ごと伝わる暖かい温もり。
後ろから抱きしめる優月の手に、自分の手を重ねた。
恋。愛。その二つ全てが彼等を包み込んでいた。