白い月~夜明け前のその空に~
「……最後に、来てみたかったんだ。この場所ともお別れ言おうと思って」
「そっか。……ふふ。考えること同じだな」
「隣、いいですか?」
「お、おう。なんだよ今更」
「へへへ。だって、私が来る前は相園君だけの場所だったでしょ?」
陸の隣に座ると、小柳は鞄と花束を脇に置き、両足を揃えて伸ばした。
「ああ、まあな。けど誰のものでもないしな」
「……あの時、あの、用紙拾った時ね、この場所で相園君と会って、本当よかったなって思った。ほっとできる場所だなって、すぐ思った。そいういう場所、ずっと探してたから……」
「確かに、学校にいること忘れさせてくれるくらい、憩いの場だったな。でも、あれ、あの時、小柳が拾ってくれたのは助かったけど、結構焦ったわ。まずいとこ見られたって。でもまあ、小柳でよかったなってすげぇ思う」
目を丸くした彼女は、陸と目が合うなり、すっと逸らすと「ああ~」と空を仰ぎながら小さく嘆いた。