白い月~夜明け前のその空に~


「相園君は、就職だったよね、てっきり進学するのかと思ってた」


「やりたいことやるのが一番だろ?俺のやりたいことが、菓子工場で働くことだったんだよ」


「夢だったとか?」


「夢とは…ちょっと違うんだよな」


「えー、じゃあ夢って何?」


「それは、言えねぇけど……」


「もぉー。もったいぶって。けち」


「けち言うなっ」


「……ふふふ」



がっくりと肩を落とし、口を尖らせふてくされたと思いきや、花が咲くようにふわりと笑みを浮かべる。

きっとここで出会ったばかりの頃には、想像もつかなかったカラフルな色が、今の彼女にある。



その彩りが周りの空気さえも染めていくようで、穏やかな春風と日差しに、心地よさを感じふっと陸は目を細めたのだった。








「……そろそろ私行くね」


「おう」


すっと立ち上がり、小柳は鞄と花束を持つ。


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