白い月~夜明け前のその空に~


静かに深呼吸すると、彼女は空を仰ぎ見た。



「晴れてよかった…。今日まで本当に、ありがとう。さようなら…」


風に乗せるように、そう言った。


答えるかのように、ふわっと柔らかい風が目の前を通り過ぎる。



「じゃあね、相園君。……元気でね。バイバイ」


「ああ、小柳もな。じゃあな」


小柳は小さく手を振ると、持ち前の可憐な笑顔を惜しみなく咲かせ、屈託のないその笑顔は等身大の彼女の姿を見たようだった。



そして、茶色の髪を翻し、駆け足で中庭を去って行った。








再び中庭に静けさが舞い戻った。



彼はここだけ時間がゆっくり流れているような、そんな気がしていた。



いつまでも緩やかで心地の良い空の下に包まれていられたら……。

そう思いながら、ただ空を眺めていた。










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