白い月~夜明け前のその空に~
「もう、どんだけからかうわけ?」
「………はは、ごめんっ。……そんな佐野ちゃん見れるってことは、もう大丈夫なんだな」
何を指しているのか瞬時に悟った優月は、途端に真顔になり、冷静さを取り戻す。
「……う、うん。お陰様で。結構、長澤には助けられちゃってるよね…。アホだけど……、いい奴」
「そうそう。俺って超いい奴だろ?アホは余計だけどな」
「そう?」
修了式でも当たり前のように茶髪で乗り切ってしまった彼は、ニカッと満面の笑みでご機嫌だ。
彼と居るだけで、つられて笑ってしまう、規律を守ることだけが正義ではない、そんなことさえも感じさせてしまう、人一倍陽気な説得力が備わっているのかもしれない。
くだらない言動も行動も多いけれど、彼のような存在は、きっととても稀で、貴重で、その友人になれたことに、優月は改めて誇りに思った。
「そういえばさ、部活辞めたって本当?辻井から聞いたけど」
「うん。裁縫は家でもできるから、これからも続けるよ」