白い月~夜明け前のその空に~
「そうなんだ。佐野ちゃん本当に裁縫好きだもんな。今度俺にも作ってよ」
「えー、ただじゃあげられないなぁ」
「だよねぇ~、佐野ちゃんがそう易々作ってくれるはずないもんな」
へなへなとしゃがみこみ、叱られた犬のようにしょんぼりする。
その姿に優月はくすっと笑った。
「そうだ!新歓の時にダンスするって言ってたよね、最高の盛り上がりだったら、プレゼントする」
「まじで?わー、やったあって言いたいとこだけど、リアルに厳しいっすね。了解!頑張るわ!!」
優月の無茶な難題も受け入れ、彼に笑顔が蘇り、やれやれと胸を撫でおろす。
「……てか、もう急がなきゃ。じゃあね!」
「おう!またな、約束絶対だからなー!」
「わかってる!」
新学期まで会えない訳ではなく、春休み中にみんなと会う予定があるにも関わらず、恥かし気もなく彼は手をぶんぶん振った。
まるで引っ越しを見送るように。
大袈裟だ。